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古書の愉しみ 保育社 カラーブックスシリーズ


11月 25th, 2012 | Permalink

このシリーズの古いものは見ているだけで楽しいですね。

なんといってもその魅力は写真。

「東京の味」シリーズは、今で言うグルメ本のはしりかもしれません。

料理の写真もさることながら、映り込んでいる人物の髪形や服装に目が行きます。

意図しないところにその時代の無意識が出ているのが面白いですね。

プロのカメラマンではない著者が撮ったものなどが使われているのでしょう。

いまどきの出版物ではダメ出しされそうなお気軽なスナップが使われていたりします。

でも、そういうものが却ってこちらの気を引きます。

目の前の客の後頭部が大きく映り込んでいたり、カメラ目線で乾杯しているカウンターの酔客の姿とかを見つけるのが楽しかったりもします。

また文体や語彙も時代を反映しています。

昭和48年(1973年)初版の『東京の味Ⅱ』には「ヤング」という言葉が頻出します。

若い人にはわからないかもしれません。当時は「若者」という意味でよく使われていました。

「ヤングのための酒場 京王プラザホテル ヤング・バー」の項には「ヤング・ピープルのためにデザインした、ヤングのためのバーである」とあります。

「四角いピザ シシリア」の項には「かつてのヤングのアイドル水谷良重の走り書きで始まった落書きで、店内の壁から天井までまっ黒になっている」とあります。

ホテルのバーが「ヤングバー」なのですから、この言葉はそうとう流行っていたのでしょう。

水谷良重がヤングのアイドルだった、とは知りませんでした。

なんだかみうらじゅんが古い絵葉書を解説した『カスハガの世界』みたいになってきました。

 

ピラフが紹介されていますが、これってドリアのような気がしますがどうでしょう。

その辺の区分はまだ未分化の時代があったのかもしれません。

 

そういえば昔は喫茶店でピラフを食べて、レモンスカッシュを飲むのが若者のデートの定番だったような気がします。

それ以上のおしゃれな食べ物や飲み物が大衆化するのはもう少しあと(『なんとなくクリスタル』や「ポパイ」「JJ」の頃)だったと思います。

 

 

一方でさすがに名店は今でもまだ残っている店も多いです。

うなぎの野田岩は、個人的に懐かしい店です。

20年近く前になりますが、サラリーマン時代に出向していた研究所で会議の時にはよくここの出前をとっていました。

いま思うとずいぶん贅沢な出前だったです。

 

この「東京の味シリーズ」は1960年代~70年代に初版が出ているので、当時の空気が強く感じられます。

これも古本の愉しみのひとつですね。新刊本ではなかなか味わえないもののひとつでしょう。

 

同カラーブックスの『ハワイガイド』は昭和44年(1969年)の初版。

東京オリンピックが終わり5年経ち、翌年は大阪万博をひかえた年。

大学紛争のピークで東大の入試がなくなった年だったはずですが、

同時に消費社会もピークに向かっている頃で、海外旅行の大衆化も始まった頃です。

奥付によれば著者は日本航空の社員。

JALパックの料金も紹介されています。

4泊6日で19万3000円。

初任給が数万円の頃でしょうから、その数か月分なのでしょう。

 

ずいぶん長くなりましたが、「カラーブックスシリーズ」を紐解きながら、古書の世界を散策してみました。

 

追記2014.2.9

ヤングという言葉が多く使われていると書いたけど、けっきょくこれって団塊の世代の別称ではないのかな?

当時のヤングとはすなわち団塊ですね、間違いなく。

1970年前後の20歳前後は戦後のベビーブーマー=団塊の世代。

けっきょくこの世代が 時代ごとに別称を持ち脱皮を繰り返していくというイメージ。

いまはシルバー世代とか呼ばれてるところのものでしょう。

しかし、そのネーミングがあまりにもトホホな感じなのは、今ほど外国語を使ったネーミングテクノロジーが発達してなかったからだけ?

 

よく考えるとその頃ネーミング(に限らず、社内で意思決定をする場合)の権限を担っていたのはおそらく当時の40-50歳の人間のはず。

つまり1920年代頃に生れた人たち。大正から昭和ひとけたの人。

そう思うとなんとなく納得できるような気もします。

 

 

「最近は戦後生まれのベビーブームの連中が増えたから、彼らにどんどん店に来てもらいたいね。連中はとにかく数が多いからこれからはいい客になってくれるはずだよ。違うかねキミ?」

この部長さんおそらくは「ベビーブーマー」とは言わなかった気がする。

もちろん「団塊の世代」という言い方もまだ当時はなかった。堺屋太一の同名小説は70年代後半になってから。

そういうちょっとしゃらくさい、より英語的に正しいカタカナ語は、多分もう少し後の1970-80年頃になってから使われ出したんじゃないかな。

いえ、未確認なので間違っていたら訂正します。

 

とまあ、そんな大正生まれの部長の声を受けて昭和一桁生まれの課長が、

「おっしゃる通りで。じゃ、部長ひとつここは英語を使ってはどうでしょう。若者のことをヤングというそうだですから、それでいきませんか?」

「お、いいね、さすが昭和生まれはセンスが違うね。英語と来たかい。ヤングの集まるバーでヤングバーか!」

「いや、お見事。部長、さすがに海軍ご出身だけあって英語はお手の物ですなあ」

「はっはっは。これからはヤングの時代だよ。君たちも頑張りたまえ」

というような会話が行われたかどうかわかりませんが、こちらの妄想がここまで暴走してしまうほど、

当時の古本には面白みがあるということで。

お後がよろしいようで。

 

 

 

 

 

 

 

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