去年買い取った古い「週刊朝日」。
出品にあたり記事を詳細に見ていたら興味深いネタが続々と登場。
ここでいくつか紹介します。
昭和31年3月25日特大号。
表紙は宮本三郎の絵「巌本真理」。
モデルの巌本真理は絵でもわかるとおりバイオリニスト。
母親がアメリカ国籍で、いまでいうところのハーフ。
ウィキペディアによれば、出生名はメリー・エステルだったが、敵性語ということで戦時中に真理と改名したらしい。
1926年大正15年生まれというから、この絵の当時31歳ぐらいだった。
何に驚くかと言うと、彼らの住所が番地まで掲載されていること。
これがその「証拠写真」。
「今週の表紙」という囲み記事。
絵を描いた宮本三郎の住所も書かれている。
そしてモデルのバイオリニストも住所も容赦ない。
この頃はこういうのを見てファンが花束を届けに行ったらしい。
牧歌的な話だ。
ウソのようだけど、実際に花束を持って行った人の話を聞いたことがある。
というのも私の母が東京育ちでこの雑誌の出る数年前、彼女が中学か高校のときに、友人と二人で高峰秀子の家まで花束を届けに行ったという。
なんと高級車で外出間際だったデコちゃんこと大女優の高峰秀子は、「あんたたち乗っていきなさいよ、途中まで送ってってあげる」とのたまい、母とその友人女学生二人はキャーキャー言いながら同乗したらしい。
日本にもそういう時代があったのだ。
もちろん「個人情報」なんて言葉もなかったはずだ。
もうひとつのネタはこれ。
夫は外で何をしているか?
いまでいうところの特集記事。
ここでは「特報」となっている。
すごいのはその執筆陣。
当時の人気女流作家だろう。
円地文子、吉屋信子、壺井栄といえば今でもビッグネームだ。
和田夏十は脚本家だが、市川崑監督の奥さんだ。
この頃はすでに入籍していたのだろうか。
知りたい人はウィキペディアあたりで調べていただくと分かるかもしれない。
そして壺井栄と言えば文部省推薦の典型のような小説『二十四の瞳』の作者。
その壺井がなんと「赤線地帯」と題した記事を書いている。
副題は「アワレなダンナさま方」。
なんと赤線に出向いて取材している。
「屈強の青年を二人お供にして、出かけてきた」とある。
墨田区の「鳩の町」まで行き、実際に娼家にまで上り込んで女郎に取材している。
やるなあ週刊朝日。
いや、取材して書いた壺井栄はもちろんもっとすごい。
売春防止法は昭和33年だからこの雑誌が出た2年後のこと。
取材当時は赤線の最後の時期だったわけだ。
本文からちょっと引用。娼家の部屋の描写。
「窓と入口のほかは壁ばかりで、夜具をしまう押入れもない。ここでは、夜具はいわば部屋の調度品なのだろう」
押入れがない、というのが何とも殺伐とした感じを表している。
この雑誌、ヤフオクに出品中。よかったらご覧ください。
http://page2.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b152113738
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