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月刊フォーNET 連載コラム 「ネット古本屋のつぶやき」 3月号


 本の処分に困っているという人は多い。そういう電話もよく受けるが、本を集めた本人が断捨離で手放したいという場合はかなり神経を使う。売るとは言ってはみたものの、蔵書に未練たらたらなのだ。いわゆる「手離れが悪い」というやつである。

 もちろんその気持ちもわかる。長年かけて集めた本だから、手放すのが忍びないのは自然な感情だろう。

 しかし、処分したい、しなければならないと思っているのもまた当の本人なのである。

 古本屋は、この未練たらたらの蔵書をその本人から買わねばならない。「手放さなければならない」という当為と「手放したくない」という感情の板挟みで悶え苦しんでいる人から本を買うのだから簡単には話は進まない。

 九州のとある市から電話があり、死んだ父が趣味で集めた膨大な鉄道模型のコレクションとそれにまつわる鉄道関係の本を処分したい、という。福岡からは距離があるし、こちらは急がないのでいつでもいいから、こちらに来るときに寄って欲しいという内容だった。その言葉を真に受けて数ヶ月間放置してしまい、いよいよ行ってみようかと電話をかけたところ、なんとその膨大なコレクションはとあるNPO法人にぜんぶ無料で寄贈したとのことだった。

 まあ、しょうがない。先方も余計な荷物を早く処分したかったのだろう。モタモタしていた私が悪いのだ。それにしても無料で寄贈したとはなんたることだろう。私が買ったなら数十万円、いや百万円以上支払ったにちがいない。そう思ったのは、後日実際に寄贈せずに残してあった鉄道模型のコレクションの一部を見たときだ。あまりにも素晴らしい出来映えだったので、これほどのものを含むコレクションなら相当なものだったに違いないとすぐにわかった。

 ところが電話はそれで終わらず「実は私の蔵書も処分したいので、こちらに来るなら寄ってもらえないか」という。その町には別件で行くことは決まっていたし、どうせ行くならついでに寄ればいいだけなので、お引き受けした。

 さて福岡から2時間以上離れたその町に行き、彼の蔵書を見た瞬間、買えるものはほとんどないとわかり、言葉を選びながらそう伝えた。しかし彼にとってはこれが予想外だったらしく、今回は売るのをやめておくと言われ、一度は辞した。しかし1時間もせずにまた携帯が鳴り、まだ近くにいるなら売りたいからもう一度来てくれないかという。二転三転し振り回されたあげく、わずかな金額で蔵書を買ったうえ、価値のない本も捨てるに忍びないということで引き取った。

 何が言いたいのかというと、自分が集めたものでなければ100万円の価値があってもタダで寄贈してしまうのに、自分の本だとほとんど市場価値がないものでもなかなか手放せなくて七転八倒してしまうということだ。

 逆にこちらの立場から言えば、自分の蔵書を売るという人から買うときは要注意で、遺族から買うときは買いやすいということになる。

 じつはこんなことは経験上痛いほど知り尽くしているのだ。このコラムでも何度かそう書いているはずだ。それなのに、たまにこんなことになってしまうのである。まあ実害がさほどないのが救いではある。  

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