よかばい堂店主は福岡の月刊誌「フォーNET」に「せどり屋雑記帖」と題する古本にまつわるコラムを連載中です。
毎月2冊弊店で取り扱ったプレミア本を紹介しています。
同誌のご厚意により過去の掲載分を転載させていただきます。
「月刊フォーNET」2012年9月号掲載分
東京大空襲秘録写真集
雄鶏社編集部 (編集)
出版社: 雄鶏社 (1953)
東京大空襲は終戦の年だから、そのわずか8年後に出版された本。
有楽町の駅にうずたかく積まれた死体の写真の横には「首のない者、手足のない者、大腸の露出したもの等全く正視にしのびない」「四、五才位の女児が全身に血を浴びながら、その傍にすでに息絶えたまだ年若い母の亡骸にすがりつき、母の名を連呼している。見れば母の顔は面をむしりとったようになり、両足も太股から千切れている」とある。
まるでポルポトのカンボジアかアフガニスタンの報道写真だ。あるいはシリアの内戦か。いずれにせよいまのわれわれが最も遠いと思っている世界。それとほとんど同じ光景が有楽町に(そしてきっと日本のいたるところで)現出していたとは想像しづらい。
写真の少女も生きていればまだ七十前。われわれの親より若い。高い確率で生きているだろう。たかだか60数年前のことだ。
最後のページには銀座4丁目交差点の数年おきの写真。1945、50、53年と歳を追うごとに光が増える。「戦後8年の歳月はこの傷をいやして、東京に昔日の或は昔日以上の反映を与えている」とある。8年で大きく復興した。いまは8年前と大きな変化はない気がする。
お買い上げの主は、超有名企業の元社長と同じ名前。お住まいからしておそらくご本人だろう。
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