小津安二郎監督のシナリオ集。脚本家の野田高梧との共著。
写真左の『お茶漬けの味 他』には表題作の他、「麦秋」と「晩春」がおさめられています。
帯には「日本映画の粋! 小津安二郎と野田高梧のコンビが生んだ作品を集める。繙けば、名篇と共に涯しない追憶に誘い込まれる。日本最高のシナリオ集」。
映像作品は自宅のテレビで何度か見たけど音響が悪くて聞き取れなかったセリフがこの本を読んで氷解することも。
たとえばこんなセリフ、いまどき誰も使わないから母国語といえどもヒアリングはほぼ無理。
「あの人今これなんだって、ラーヂーポンポン、七ヶ月…」
ラーヂーポンポン…。たぶんlarge ポンポン(=お腹)で、「お腹が大きい(妊娠中)」ことを言うのだと思う。
これは「晩春」の中のセリフです。
この頃はこういう言い方が使われていたのかもしれない。
もう一冊の『早春』は岸恵子の可愛らしさが印象的でした。
彼女が新婚の池部良をかどわかすんですね。
もうひとつ興味深いのは登場人物の年齢が書かれていること。
これは映画だけを見ていてはわからない。
シナリオを読んで初めて、役の年齢を知るわけです。
佐分利信が扮する『お茶漬けの味』の主人公はなんと42歳。
役者の実年齢は別として少なくとも小津監督と野田高梧はそういう設定で書いていた
(ちなみにこのとき1909年生まれの佐分利信は43歳)。
今頃の42歳とはたとえば誰でしょうか?
調べたらナイナイの岡村くんが1970年生まれですね。
あと博多華丸・大吉もこの年生まれだそうです。
「お茶漬けの味」の佐分利信と同い年だとはにわかには信じがたいです。
こんなのもシナリオを読む楽しみのひとつかもしれません。
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